代 表 的 な 精 神 疾 患

①統合失調症    Schizophrenia

《特徴》 精神分裂病という病名は、余りにも誤解や偏見が多いので、2002年に統合失調症という名称に変更された。
多くは青年期から成人前期にかけて発症する。経過はさまざまで、再発することが多い。
50%は普通の日常生活に復帰している。
原因としては、神経発達障害仮説(出生前後に脳内神経の発達に障害が起こり、青年期になって色々なストレスと相互作用を起こして、発病するという仮説)が有力になっている。育て方や遺伝が重視された時期もあったが、現在は否定されている。

《症状》 主として対人関係に関連した症状が出現する。悪口などの幻聴や被害妄想などの症状(陽性症状という)が目立つ場合と、意欲や関心が乏しくなり、理由もなく人を避け閉じこもる症状(陰性症状という)が目立つ場合がある。

《対応》 薬物療法を中心に、状態に応じて作業療法、生活技能訓練、デイケアなどを利用して治療する。入院は長くならないように注意し、地域で生活できるように援助する。服薬が中断すると再発しやすい。
接するときは、付き合いが苦手な人が多いので、話しやすい雰囲気を作ることが大切である。 

②躁うつ病      Manic Depressive Illness (MDI)

最近は、気分障害(MoodDisorder)という病名を使うことが多い。

《特徴》 感情、気分が変動する病気で、躁状態やうつ状態になる場合に使用する。
一個人に躁状態とうつ状態の両方が起こるとき、躁状態のみ(躁病)、うつ状態のみ(うつ病)のときがある。

《症状》 躁状態になると、気分は高揚し、ふだんは大人しい人が多弁となり、活動的になり、睡眠不足も苦にしない。次第に自信過剰となり,誇大的言動が目立ってきて、高価なものを“つけ”で買ったりする。
病識がないため、周囲の人の説得も無視し、トラブルになる事も多い。

《対応》 状態に応じた薬物療法(抗そう薬,抗うつ薬,気分安定薬など)が有効である。
躁状態がひどくなると、怒りっぽくなるので、対応に注意を要する。

③うつ病        Depression,  Depressive Disorder

《特徴》 躁うつ病の中で、うつ状態のみを呈する場合に使用する。最近非常に増えている。
女性の方が多い。中・高年になると多くなる。(初老も自殺に至ることが多い病気である。)

《症状》 抑うつ的になり、元気がでず、何もしたくなくなる。一日の中でも、朝の方が調子が悪い。
次第に自信はなくなり、自分を無価値と考え、自責的になる。
将来に対して悲観的となり、ついには自殺まで考える。まじめで責任感の強い人の方がなりやすい。

《対応》 抗うつ薬の服用と休養する事で多くは回復する。抑うつ感が強いときは、励ましは禁物である。
自殺のおそれが強いときは、入院を考える。
家で対応するときは、家族は目を放さないようにする必要がある。

④非定型精神病   Atypical Psychosis

《特徴》 定型の精神病(=統合失調症)とは異なった発病の仕方、症状、経過をとるときに使用する。
発病は急性で、そのときの事や途中の経過をよく覚えていない事が多い。
経過は統合失調症より良い場合が多いが、再発を繰り返すと生活能力は低下する。

《症状》 統合失調症のとき見られる症状と、躁うつ病のとき見られる症状が混在している。
それが“非定型”と呼ばれる所以である。

《対応》 薬物療法が有効である。普段は話し好きで人当たりの良い人が多い。

⑤心因反応      Psychogenic Reaction

《特徴》 厳密には、通常の日常生活で出会わないような出来事(事故, 近親者の不慮の死など)に
反応して、精神異常(精神病的になることも)を来たすとき使用するのが原則だが、実際には、何らかの原因(出来事や悩みなどそうたいした事でなくても)があって、それが心理面に強く影響(即ち、心因)して発病したと考えられるときによく使用されている。
診断書の病名としてよく使用されている。
最近注目されている外傷後ストレス障害(PTSD)は一種の心因反応である。

《症状》 どんな症状でも起こりうる。

《対応》 初期は薬物療法と休養が基本になる。続くときは根気よい精神療法や環境調整が必要になる。

⑥境界例        Borderline Case

《特徴》 元来は精神病と神経症の間(即ち境界)の症状を呈する場合に使用していて、現在でもその意味で使用する医師もいるが、少なくなっている。最近は境界性人格障(Borderline Personality Disorder)の診断名を使用することが多い。

《症状》 好悪の感情が激しく変動するのが主症状である。それをそのまま相手にぶつけるために、人間関係は不安定で壊れやすい。
そのためしばしばうつ状態になったり、自傷行為(リストカット)に走ったりする。
一時的に幻覚や妄想などの精神病症状がでるときもある。

《対応》 感情が激変しやすいので、それに巻き込まれないように注意しなければならない。
精神療法を中心に薬物療法を併用して治療を行うことにより、次第に自分の感情をコントロールできるようになることが多い。治療には多くのエネルギーを要する。

⑦神経症        Neurosis, Neurotic Disorder

《特徴》 これまで“精神病”と対比されて非常に多く使用されてきた。
即ち心理的・性格的原因により不安などの神経症症状が出るとき使用される。
このとき身体面には異常はないことが条件になっている。しかし最近、これまで神経症と呼ばれてきた病気に、身体面の異常が発見されることが多くなってきたため、神経症という診断名が使用される範囲は狭くなっている。

《症状》 日常生活に支障になるような不安、恐怖、いらつきなどが出現する。 

《対応》 精神療法と抗不安薬を使用する。殆どは外来で治療し、入院することは少ない。

⑧パニック障害     Panic Disorder

《特徴》 従来は、心理的原因を重視し神経症の中に含めていたが、脳内に発病に結びつく機能異常が見つかったため、神経症には含めなくなった。

《症状》 強い不安発作、動悸、息苦しさ、死ぬのではないかという恐怖などのいわゆるパニック発作が出現する。そのために外出する前などは外で症状がでるのではという不安(予期不安という)が強くなり、結局外出できなくなる。

《対応》 抗うつ薬の一部(SSRI)が有効である。発作出現時は、まず安心させることが大切である。
恐怖心が強く行動に移せないときは、行動療法(少しづつ段階的に行動範囲を広げる治療法)が試みられる。





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